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​精 霊

第二部 ラージャスタン・アグラ宮殿編

第14話「鐘が鳴る」(2)

 儀式が無事終わったあと、シフルの正式な処分が下された。自室での謹慎一か月。この間、シフルと彼に従う妖精ラーガは、ムリーラン宮内に与えられた部屋を出ることは許されない。当然、慈善園の授業も欠席。留学メンバーや皇女夫妻と面会することも、書庫に行くことも禁止された。

 今回の件がプリエスカに知らされることはないといわれ、シフルは心から安堵した。一か月大人しくしているぐらいお安い御用だ、とも思った。

 が、実際に始まってみると、かなりきつかった。もともと、父親の軟禁状態を脱出して理学院に逃げこんだ過去のあるシフルだ。広いとはいえ、一室に妖精と担当女官の三人きりで一か月過ごすことは、かなりの苦痛を伴った。

 残念ながら書庫の本は借りてきておらず、慈善園の教科書も教室の机に備え付け。よって、勉強も読書も不可能。シフルにできることといえば、食べることや入浴すること、ラーガと話すこと、メアニーの気がむいたときに彼女と話すこと——ただし、彼女の気分次第でよけいな「リスク」が発生するので要注意なのだが。

 それともうひとつ、ゼッツェを吹くことぐらいだった。

(とはいえ)

 シフルはバルコニーに出た。広大な庭を見渡すことのできる、さすが皇帝の居城というべき眺めだ。しかし、それにしても、なんといっても広すぎる。

(セージがいないんだよなあ……)

 ポー、と試し吹きして、楽器をあたためた。いつも彼女と合奏していた精霊讃歌の四番、高声部。その冒頭を、軽くなぞっていく。

 だだっ広い庭園に、シフルひとりの音色だけが、寂しく渡っていった。

 セージの部屋にも、きっと庭園はあるのだろう。けれど、シフルの庭園とはつながっていない。シフルがゼッツェを鳴らしたところで、彼女の部屋までは届かない。

 ——シフル! ……

 庭園のはるか向こうに見えている、シフルの部屋と同じ形状のバルコニー。ゼッツェを吹いたら、それに気づいたセージが、あのバルコニーから顔を出してくれればいいのに。

 けれど、この広すぎる庭園には今、シフルと、つまらなそうにしている青い妖精しかいない。妖精は、本来の主人であるビーチェ以外には一切関心を払わないので、ゼッツェ演奏につきあってくれることはない。いつもどうでもいいという風情で、つかず離れずの位置にたたずんでいる。何百年もビーチェとあの家に暮らしていただけあって退屈には慣れているらしく、黙っていつまでも立っていた。

 仕方なく、ひとりでひたすらゼッツェを吹きつづけたので、一週間たつころには練習不足ゆえのなまりがなくなって、息も楽になり、指もよく動くようになった。それはいいのだが、少々気になったのは、ムリーラン宮でゼッツェを再開して以来、火(サライ)の光が見えないことだ。

「ここは、火(サライ)の結界が強すぎる」

 と、ラーガは言った。「表の結界は、まだ低級精霊が入りこむ余地のあるものだ。だが、この後宮の結界はちがう」

「より大きな力で壊さない限り、か」

 そうだ、とラーガは答える。バルコニーから芝庭の夕景をみつめながら、妖精は手すりにふわりと腰かけた。

「俺のトゥルカーナの結界のように、この世界には何者かの領域というものがいくらか存在している。だが、これほどに何者の侵入も許さない代物は珍しい。大気を流れゆく精霊を完全に遮断し、人工的に季節ごと植え替えられる花々の、いわば箱庭だ」

「オレも、客舎のほうが好きだな」

 セージの女子部屋に扉がないのはどうかと思ったが、客舎なら外のジャムナ川が見えていたし、ルッツとメイシュナーと同室なのも、広大な部屋でひとりきりになってみると、もはや懐かしい。

 つまりここは、人も精霊もいない場所だった。メアニーは一応人なのだが、あの「怖い」メアニーと、急に襲いかかってきて話も通じないメアニーのことを思うと、同じ人間のような気がしない。

(やっぱ、セージと話したいな)

 と、シフルは思う。(儀式のあと、会わせてもらえないまま謹慎させられたからな。あのあとどうなったかも聞きたいし、精霊王のことも報告したい。ラーガは全部は話してくれないから、肝心の話ができないし。それに……)

 ——アマンダ。

(……どうして……)

 何しろ時間だけはあり余っているので、ついつい自問してしまう。答えは出ないとわかっているのに、どうすればアマンダが何ごともなく理学院で学生生活を送っている現在があったのかと考えてしまう。

 アマンダはシフルたちから離れたけれど、アマンダはアマンダで普通に幸せになるはずだった。アマンダの幸せとはどういうものなのかと、もし訊かれたら少し困るのだが、とにかくそのはずだったのだ。それが、今は精霊人形として眠りの中にいる。

(ビーチェと同じように、『精霊人形として頭角を表せ』ば、眠りから醒めて特別な力を与えられることもあるんだろう。でも)

 時(ヘムダ)と空(スーニャ)、ふたつの元素を与えられるほどの寵愛を受けたビーチェでさえ、やがて呪いを受けることになった。精霊王の寵愛とはそういうものなのだ。決して永遠ではない。

(そりゃあ、永遠なんてものはないのかもしれない。ビーチェがあのとき親父にあげようとしたもの以外は)

 だが、あれも永遠の闇といっていい代物だった。生きている実感などまるでない、永遠の停滞。いずれにせよ永遠が存在しないなら、自分の命を賭けて精霊王の寵愛を求める戦いを挑むのも、それはそれでアマンダの人生だろうか。今や友達でいられているかどうかもわからない距離で隔てられたシフルが、アマンダの人生を推し量ろうとするのは不遜だろうか?

 ——……行こう。

 そう言って、元恋人の男の手をとったアマンダ。そして今は、その男の手を放し、精霊王の手をとった。それはアマンダ自身の選択だった。しかし、

 ——シフル。……

 少年は、たしかに彼女の声を聞いたのだ。

「ラーガ」

 少年も、妖精に倣って手すりに腰かける。「どうやったら、アマンダを助けられる?」

 ラーガは濃い青の瞳をすがめた。

「おまえは空(スーニャ)の力を司る存在だ。精霊王の城は空(スーニャ)の力が多く使われていた。おまえは知ってるはずだ。あそこで眠っているオレの友達の、金髪の女の子のことを。おまえも一度会ったことがある……おまえと話しているときにその子が偶然通りかかって、見られた」

「言っておくが」

 ラーガは口をひらいた。「金髪の精霊人形は、おまえの友達とやらだけじゃない」

「ああ、シビュラさんも金髪だったな」

「正妃も含め、全員金髪だ」

「え、何それ」

「銀髪の時姫(ときのひめ)さまへの当てつけだ。時姫さま放逐後に精霊人形として迎えた女は、全員時姫さまのお色の正反対かのような金髪。それが、およそ五十人というところか」

 シフルはつい、似たような金髪のかわいい女の子たち五十人が並んで眠っている光景を想像した。それは、かわいいとか何とかいうよりも、

「……なんつーか、悪趣味」

「そんな状況で、一度会っただけの女などわからんぞ」

 ごもっともな主張である。

「じゃあさ、時姫以外で、精霊人形の身分を脱出できた人っていないのか?」

「それはシビュラだ。正妃になれば、眠りを強いられることはなくなる」

「シビュラさんと時姫以外で」

「いない」

 即答だった。

「だけどさ、ビーチェへの当てつけで全員金髪ってことは、全員ビーチェと別れたあとにさらってきたってことだろ。ビーチェは最初の精霊人形だったわけじゃないだろうから、古株の精霊人形だった人たちは今いないってことだよな。それってつまり、精霊人形の身分を脱出できたってことじゃないのか」

「脱出といえば脱出だ」

 ラーガは相変わらず表情を変えない。「止められていた時を動かして、老いて死ぬことは」

「——は?」

 死ぬ? 今、そう言ったのか?

「女たちは精霊人形になったとき、時を止められる。永遠に美しい姿のまま、精霊王の居城で眠りつづける。しかし、それも精霊王が決めること。精霊王にとって女が不要となれば、止めていた時を動かし、場合によっては本来の時以上の時を与えて、死に至らしめることも少なくない」

「じゃあ……古株の女の人たちは、みんな死んだってことなのか」

「そういうことだ」

 伝承にいう《妖精の花嫁》となって姿を消した女性が帰ってきた例は、過去に聞いたことがない。それは、こういう意味だったのか。

 ——アマンダ……!

(アマンダが選んだことだとか、関係ない)

 アマンダを助ける。絶対に。おそらく、アマンダを助けることができる可能性がほんの少しでもある人間は、世界で自分ひとりだけなのだから。

 頭の中が焦燥感で満ち、焼けるように熱くなる。精霊王がアマンダへの興味を失ったら、すぐにでもアマンダは時を進められて、殺されてしまうかもしれないのだ。それは明日かもしれないし、三か月先かもしれないし、何十年も先かもしれない。

「精霊人形の時を止めたり動かしたりするのって、やっぱりビーチェの時(へムダ)の力なのか?」

 シフルは尋ねる。「精霊王が時(へムダ)の力を必要としたときは、ビーチェが力を貸しているってことなのか? 空(スーニャ)の力の場合は、ラーガが? それって、拒否できないのか?」

 精霊人形の時を止めたり動かしたりするにせよ、精霊王の居城に結界を張るにせよ、明らかに時(へムダ)や空(スーニャ)の力が必要そうに見えた。しかし時姫は精霊王に「放逐」されている。かつて時姫に与えられたラーガも同じことだ。ならば、精霊王に力を貸す義理はないのではないか。

「当然、時(へムダ)のすべては時姫さまの支配下にある。空(スーニャ)もそうだ。だが」

 ラーガは淡々と答える。「すべての精霊は、精霊王の命令を拒めない。それは、時姫さまとて同じ」

「そういうもの、ってことか……」

「そうだ。それが、精霊王が万象を司るということの意味」

「そっか……」

 シフルは手すりから下りると、座りこんでそこに頭を突っ伏した。うすうす、そうなんだろうという感じはしていたが、やはりそうなのだと思うと、どうしようもなく絶望感がある。

 ——すべての精霊は、精霊王に縛られている。

 呪われ、追放された時姫ですら、例外ではない。時姫は、仮にアマンダの時間を止めるのがいやだったとしても、拒否することはできないのだ。精霊王が命じるまま、ひとりの女の子の時を奪い、与えることしかできない。

(あ、そうか)

 シフルは、母というより姉のような年ごろの、自分と同じ銀の髪をした女の姿を思い浮かべた。お気に入りの、空色のワンピースを着た姿を。父が彼女によく似合っているといった、戦時下では少し派手だったワンピース。

(ビーチェ自身、時を奪われた、ひとりの女の子なんだ……)

 助けたい、と。反射的にシフルは思った。

(でも、どうやって)

 ビーチェにとっての、救いとは何なのだろう。

 ——その子に、メルシフルという名を与えよう。

 あのとき、ビーチェは父を振り返り、告げた。

 ——私の子である証として。——中世ロータシア語で、《真の無(メル・シフル)》を意味する言葉……、私が長年望んできたことだよ。……

(ビーチェの、望み)

 シフルが顔をあげたとき、すでに庭園は藍色に染まっていた。似た色の髪と瞳をした妖精も、景色のなかに溶けこんでいた。

 

 

 一か月が終わったとき、少年には解放の喜びしかなかった。

 長かった。本当に長かった。ゼッツェの腕だけはやたら上がったが、そうはいってもつらかった。だからこそ謹慎は刑罰になりうるわけで、マーリ皇女の気まぐれに救われてなんとかその処分で済んだのだということも、わかってはいるのだが。

 その朝、シフルは目覚めると、勢いよく天蓋から飛びだした。次の間の扉をパーンと開き、そこに控えていたメアニーがいつものように色めきだつのを、《おはようございます!》の大声で封じる。

「《今日から》! 《外に出ていいですよね》!」

「《あ、ええ、……はい》」

 シフルの激しいハイテンションに、ついていけていないメアニーだった。

「《じゃあまずは朝餉! セージと一緒に朝餉をとります、連絡お願いします! それから例の件、妖精使いのコツを教えてもらえるって話、あれお願いできますか? オレ一か月ちゃんと大人しくしてましたよね》?」

「《あーはい、覚えてます、覚えてますってば》」

《だからちょっと落ちついてくださいよ》と、珍しくメアニーのほうが引き気味だ。

 実際、うれしくてうれしくて、シフルはどこかに飛んでいってしまいそうな気分だった。ようやくセージやオースティンや他のみんなと話せる。室内とバルコニー以外の景色を見にいける。書庫で本も読める。慈善園の授業に出られる。

 行動の自由が奪われていることが、こんなにつらいだなんて。一度軟禁された経験はあるものの、あのときはすぐに逃げだしたから、一か月間もの苦痛も解放の喜びも知らずにすんだ。

「《セージ! 久しぶり》」

 朝餉一式を載せたワゴンと、それを押すツォエルとともに、セージが部屋に現れた。

「——シフル」

 しばらく顔を見ていなかったセージは、なんだか大人びたようで、以前とはちがってみえた。遠慮がちな笑み——少なくともシフルの眼にはそう映った——を浮かべて、どことなくたおやかな挙止で、彼女は手をあげた。

 顔を見ない一か月のあいだに、こころなしか髪がのびているようなのも、大人びた印象をつくっているかもしれない。《ワルツの夕べ》の際に彼女がたわむれに切った髪は、今や肩より下に届いていた。

「……《何?》」

「あ、《ごめん》。《一か月会ってないだけなのに、髪がのびた気がして》」

「《間があくと、変化がはっきりわかるよね。毎日会ってると、案外わからないけど》」

「《最初に会ったときみたいな長さに、じきになるかな》」

「《ああ……》」

 最初に会ったとき、彼女は長い黒髪をひとつに結んで背中に垂らしていた。あのころは、尻尾のような髪を揺らしながら立ち去っていくセージが、彼女のすべてだと思っていたのだけれど。笑って髪を切り落としてきたとき、彼女は文字どおり「変身」してみせたのだ。そして今、また少し「変身」した彼女は、どこかもの憂げに自分の髪に触れた。

「《……そうだね》」

 彼女は手短にそれだけ答え、《食べようか》といって卓についた。シフルも倣うと、ツォエルとメアニーが手早く支度を始める。シフルが女官たちに席を外すよう頼んだのは、朝餉がすんでからだった。

「——アマンダが、精霊王の城に」

 セージは普段あまり見ない表情で、ぽかんと口を開けていた。いつもは女官がいなくても意識してラージャ語を使う彼女だが、現代プリエスカ語に戻っている。

「それはまた……何がどうしてそんなことに……。まさか、シフルの貸出カードから?」

「わかんないけど、やっぱ最短距離はそこかなって」

「いや、きっとそうだろうな」

 セージは戸惑いから一転、ほぼ断言する。しかし、ラージャ語会話が再開しないところを見ると、やはり常になく動揺しているのかもしれない。

「アマンダはああ見えて優等生タイプだ。最短で答えを求めるはず。アマンダがほしいもの、召喚士としての力をいちばんもっている身近な人間は誰かといえば——ラーガさんを従えているシフルだ。シフルの痕跡から方法を探そうとするのは、大いにありうる」

「オレは、セージの痕跡も調べてる可能性が高いと思う。なにせ、アマンダがいちばん意識していたのはセージだろ」

 ——本当はセージ、全部わかってるんでしょ。私が何を知られたくなかったかなんて、何を恐れていたかなんて。……

 最後にアマンダと会話したときのやりとりが、今も頭を離れない。事情はよくわからないが、ひとついえるのは、アマンダがもっとも恐れていたのはセージの目だということ。

 であれば、必ずやセージの力の源を知りたいと思うはず。貸出カードにヒントがあるとも思えないけれど、アマンダはセージの故郷の水源のことは知らないだろうから仕方ない。

「それはそうかもね。だけど、私の貸出カードにはレポートに使った資料が並んでるくらいで、特に収穫はないと思うけど。一発逆転のジョーカーは、明らかにシフルのほうだよ」

「だよなー……」

 ついついセージにも責任を負わせたくなってしまうのだが、どう見てもアマンダ失踪の責任はシフルにあった。アマンダが選んだこととはいえ、遠回しにシフルの事情にアマンダを巻きこんだことになる。

 こうなるのがいやだから、ラーガや時姫(ときのひめ)のことをセージ以外の誰にも知られたくなかった——なんて、そんな予想は立てられっこない。理学院生に知られたらどんな反応をされるか怖かった、つまり疎外されるのが怖かっただけだ。まさか、こんなかたちであのときの「反応」がかえってこようとは。

「……とにかくオレ、アマンダを助けるよ」

 少年はそう言って、目の前の少女をまっすぐに見た。

 みつめかえすセージの黒い瞳が、ひどく澄んで、ガラスのようだった。先ほどから彼女のまとっている儚げな雰囲気が、それに拍車をかけていた、それは、わずかに少年を怯ませた。だからこそ、少年は意を決して口をひらいた。

「精霊王と少しでもかかわりがある人間は、オレだけだ。だからオレが、絶対にアマンダを助ける」

 むりだよ、と。

 自分の中で声がする。精霊王は異常な人物だ。シフルがどんなに説得したところで、聞くような価値観の持ち主ではない。昔、時(へムダ)と空(スーニャ)の二属性を、世界の三分の一を与えた時姫にすら、呪いを与えた。今は与えた力を利用することしか考えていない。それと執着だけが残っている。

 精霊王の城から、シフルが生きているあいだにアマンダを助けだそうなど、むりな相談だ。はっきりいって、手がない。けれど、このままアマンダの人生の時が空費されていくのを、手をこまねいて見ていることはできない。

 むりでも、やるしかないのだ。できるのはきっと、自分だけなのだから。

「オレがきっと助けるから……セージは見ていてほしい。オレがあきらめないように、見張っていてほしいんだ」

 本音をいえば、セージならきっと何か知恵を出してくれるだろう、という淡い期待もあった。セージは、これまでシフルが何か問題にぶちあたったとき、必ず助け舟を出してくれたからだ。

「……わかった。見てる」

 彼女が短くそれだけを言ったとき、シフルはほっとしたような、わかっていたことを確かめたような、そんな気持ちだった。

 今回のことだけは、セージの助け舟はない。自分ひとりの戦いだ。

「っていっても、当分は宮殿の結界から出られないから、何もできないんだけどな。アマンダ、なんとか無事でいてくれるといいんだけど。……オレの報告は以上! セージたちは、休戦記念日の残りの儀式どうだったんだ? オレが消えたあとって、何かおもしろいことあった?」

 努めて明るく尋ねると、セージは一瞬言葉につまったようだった。

 しかしそのあとで、別に何もなかったよ、ねぎらいの宴があったぐらいで、とだけ答えてくれた。えー、いいなー、といつものようにおしゃべりしながら、少年はもう以前と同じ時間には戻れないのだと、静かに悟っていた。

 

To be continued.

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