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​精 霊

第二部 ラージャスタン・アグラ宮殿編

第1話「英雄の子ら」(3)

 たった三人のこの旅では、何もかもが質素かつ隠密のうちに行われた。

 トゥルカーナからラージャスタンまで、二頭立ての馬車だと約三週間かかる。その間の寝食をどうするかといえば、食事は干し肉や乾パンなどの携帯食品、宿はもちろん馬車だ。入国を民に悟られるなと厳命されているため、道々一夜の宿を頼むするわけにもいかない。狭い馬車に少年三人は入りきらないので、オースティンが馬車で眠り、従者二名は火をおこして野宿する。

 移動中も常に気を遣う。何しろ公子の馬車だと感づかれては困るので、人通りの多い街道では、容姿に特徴のあるオースティンは隠れている。従者二人もそ知らぬふりを貫く。国境役人にも話が伝わっており、彼らも同じように「何げなく」三人の馬車の通過を許可した。オースティンを確かめて、噂どおりの容貌に声をあげかけた者もいたが、それより早く上司に叱られた。

 そんな気疲れ続きの旅のはじめ、オースティンは寝てばかりいた。一週間を過ぎたころ、馬車の揺れには否が応にも慣れ、まともな食事がしたいとぼやいてばかりいた。けれど、トゥルカーナを出国し、スーサを通り抜け、ラージャスタンの辺境にたどりついた時分から、オースティンは文句ひとついわずに、大人しく馬車に揺られていた。

 旅慣れたのか、それとも観念したのか。何にせよ、じきに離れることになる主との時間が、アレンには大事だった。窓の外の風景をいちいち指さしては、事前に叩きこんできた知識を総動員して解説したり、異国の珍しさに感心してみせたりした。

「ほら、見てください、オースティンさま」

 話しかけると、ああ、とか、ふん、とか、聞いているのか聞いていないのかわからない反応が返ってくる。「常緑の森に入りましたよ。アグラ宮殿は、皇都ファテープルの果て、常緑の森の中にあるそうです。もうちょっとで着きますね」

 アレンは古い馬車の左右から迫ってくる濃緑の木々を、感慨深く見やる。眼前にひろがる常緑の森は、緑が濃すぎて却って暗い——そういう森だった。

 トゥルカーナの森は鮮やかで明るく、自分たちの生活とともにあった。が、ラージャスタンのこの森は、得体の知れない何ものかに支配されていて、それが自分たちを虎視眈々と狙っているような、ぞっとする恐ろしさに満ちている。単に知らないということがそうした考えにつながるのだとしても、アレンにはそうとしか思えなかった。

 早くトゥルカーナに帰りたかった。でも、帰るときはオースティンをアグラ宮殿においてきたときだ。素直に願う気にもなれない。

 するとオースティンは、アレンの気持ちを察したように、

「常緑の森、宮殿の奥で待つのは夢みるお姫さま、か。やれやれ」

 と、面倒くさげにひとりごちた。アレンは苦笑した。

 そのとき、

「——うわっ」

 突然、御者のハスダが悲鳴をあげる。「どう、どう、止まれッ」

 馬のいななきがそれに続き、馬車全体が傾いだ。

「!」

 主従二人は座席から宙に投げだされた。アレンはとっさにオースティンをかばい、主を抱きかかえる。壁に打ちつけられて、少年たち二人はうめいた。背中をぶつけただけで、外に飛びだしたり窓を突き破ったりしなかったのは、幸いというべきか。

「おけがは!」

 アレンは主のからだを離し、尋ねる。大事ない、とオースティンが答えたので、小姓はさしあたり安堵の息をつく。が、馬車が斜めに傾いており、不自然な体勢を強いられた。

「ハスダ! どうした?」

「申しわけありません!」

 アレンが呼ぶと、ハスダが大あわてで扉を開け、顔をのぞかせた。「車輪が外れました!」

「……車輪?」

 顔がおのずからひきつった。アレンとオースティンは、ハスダに周囲の状況を確認させてから馬車を降りる。ここは森のど真中で、今のところ民間人が通りかかる様子はない。外に出て馬車を見てみれば、確かに四つの車輪のうちひとつがなくなっている。あたりを見回すと、車輪は少し離れたところで所在なげに転がっていた。

 急いでとりにいき、車輪を抱えて戻ってきたハスダに、アレンは言う。

「とりあえず、公子は無傷でいらっしゃる。咎めはない」

「はい……、すみませんでした」

「だが、どうしてこんなことに?」

 問いかけたあとで、アレンは情けなく傾いた馬車を一瞥する。このボロ馬車で、どうしてもこうしてもないか。

「鹿が横切りました」

 御者ハスダは説明する。「急に馬車を止めたので、反動で老朽化して弛んでいたネジがとれたのでは」

「……よくわかった」

 アレンとハスダは顔を見あわせて、力なく笑った。

 ハスダは近隣の村に修理工を呼びに走り、アレンとオースティンは二人、壊れた馬車と二頭の馬とともに取り残された。アレンは木立の合間から空を見あげる。日の高さが、正午過ぎであることを物語っていた。いつ一般人が街道を通るとも知れないため、主従は道沿いの森に身を潜ませて御者の帰りを待つことにする。

 アレンは正直、頭が痛い。これでは本末転倒ではないか。目立たないようにとの配慮で民衆の使う馬車を借りたというのに、必要以上に目立たなくするべく特別に古いものが選びだされ、その古さが仇となって壊れ、結果、民に助けを求めることになる。そして、へたをするとオースティンの到来を民に知られることになる。

 なぜこうも、トゥルカーナという国は間が抜けているのだろう。これなら、《英雄同盟》が結成される前に滅びたほうが己のためだったのではないか。自分の生まれ育った国に愛着はあっても、その国がことあるごとに無意味な行動ばかりしているのが、どうにもこうにもアレンにははがゆい。

 アレンがラージャスタンに対して申しわけない気分に陥っていると、そのかたわらでオースティンは口笛を吹きはじめた。しかも、楽しげな曲調の流行歌である。さすがにアレンは、何がうれしいんですか、と叱責した。

「おまえこそ、何を憂えることがある、アレン?」

 オースティンは愉快そうに返す。「車輪が取れたのには焦ったがな、宮殿に着くのは遅ければ遅いほどいい。夢みるお姫さまとの時が少しでも減るんだ」

「公子」

 アレンは声を落として主を諌める。「ここはもう先方の領土内なんですよ。そんな発言は許されません」

「どうせ誰もラージャ語以外わからないだろ?」

 オースティンは平然としたものである。

「そりゃ、そうですけど」

 なおも諫言を続けようとしたところ、オースティンが指を唇に当てた。

「?」

 オースティンは、耳を澄ましているようだった。小姓も主に倣い、森を包む静寂に耳を傾けた。走り去った御者はすでに遠く、物音といえば風の音と葉ずれの音のみ。

 いや、ちがう。何か、他の音が混じっている。——鈴の音だ。

 よくよく耳をそばだてていると、鈴の音とともに、土を踏みしめるかすかな足音。

 誰かくる、とオースティンの唇が動いた。アレンは焦った。どうやらその誰かは、森の奥からこちらに向かっているようだ。街道を駆け抜ける馬車なら、木陰で息をひそめてやりすごすこともできようが、森を静かに歩く単独行動の人間の目を、いったいどうごまかすか。二人はとにかく、道を挟んだ反対側の森に入っていき、そこで様子をうかがった。

 鈴の音は、迷いなくこちらをめざしている。チリン、チリン、と楽しげに、けれど確かな足どりでオースティンたちのほうへ。

 果たして姿を現したのは、ラージャスタン人の少女だった。彼女の小さな足を包む布靴に、金の鈴が光っている。少女は全身ラージャスタン式の衣装を身にまとっているので、おそらく鈴つきの靴もこの国特有の服飾文化なのだろう。

 年ごろは十二、三といったところで、思ったとおり一人だった。肩には弓と矢筒を背負っており、狩りの最中と推測できる。ラージャスタンでは、あんな少女にひとりで狩りをさせるらしい。勇ましいことである。

 アレンが興味深く見守っているあいだに、少女は森を抜けて、街道に出てきた。それから、

「どうなさいました?」

 と、訊く。

 明らかに、反対側の森に隠れる二人のほうを向いていた。アレンは困り、主に問うような視線を投げた。無視するわけにもいかないだろう、とオースティンは肩をすくめる。アレンが、へたにごまかすのとマキナ皇家のいいつけを遵守するのと、どちらが大切だとお思いですか、と小声で叫んでも、オースティンはどこ吹く風である。さっさと木陰を出ていくと、礼儀正しく頭を下げた。

 アレンは気が変になるかと思った。皇家のいいつけを破り、民間人にばっちり目撃されてしまったのだ。これは叱られるどころか、減俸もしくは辞表ものの大失態。責められるのはオースティンではなくアレンとハスダなので、当の主はといえばまったく気楽なものだ。にこやかにあいさつを交わしたあとで、懇切丁寧に事情を述べていた。アレンが恨めしげににらんでも、少年公子は毛の先ほどもかまわない。

「まあ、車輪が……。災難でしたわね、トゥルカーナのかた」

 少女は芯の通った声音でいう。「おけがはありませんでした?」

「ええ、運よく」

 と、オースティンは答える。

「それはようございました」

 彼女は紫の瞳をわずかに細めた。前髪が揺れ、彼女の耳があらわになる。白い耳たぶには、ラージャスタン式の服装に合わせたとは考えにくい、トゥルカーナの民間人が好んで着用する——ありふれた雫型の耳飾りがとめられていた。アレンはそれに見覚えがある気がして、密かに凝視した。

「ところで、お二方」

 彼女はおもむろに話題を変えた。「こちらに鹿が参りませんでしたか。わたくしは、その鹿を夕食に供するつもりで——」

「! あなたが鹿をこの道に追ったんですか?」

 少女の言葉に、アレンは気色ばむ。

「ええ」

「その鹿ですよ!」

 アレンは怒りをにじませて告げた。「あなたの夕食のために、ぼくも主人も負傷するところです」

「そうですか」

 少女はその事実を知っても、揺らぎもしない。「それはとんだご迷惑を」

「なッ」

 代わりに、アレンが冷静さを失った。「それどころじゃない! あなたはこのかたをいったい誰だと——」

「おい、アレン」

 さすがにまずいと考えたのか、オースティンが制止する。「そう怒らずとも……、無傷ですんだのだから」

「大切なのは結果ですわ。ご無事でなによりでした」

 少女は肩から弓を降ろし、おざなりすぎも卑屈すぎもせず、低頭する。その振るまいには、若さと性別に不釣りあいな貫禄が漂っており、アレンは思わずたじろいだ。彼女は簡単な謝罪でことをすませようとしているけれど、それよりもなお、彼女に頭を下げさせたことのほうが重大だと感じてしまったのだ。

 気品とでもいうのだろうか。それも彼女の場合、あとから習得したものではなく、生まれながらにして、いや生まれる前から宿命的に備えていたもの。アレンは息を呑み、かたわらのオースティンに目をやる。主は主で何かを察したらしく、わずかにうなずいてみせた。

 豊かな亜麻色の髪を結わえ、ラージャスタン式にしては身軽な装いをした少女は、俗世のせわしなさを感じさせることなく、ゆっくりと口をひらく。

「しかし、もしもこれが、あなたがたのお命に障るようなことになっていたならば——」

 声の響き自体の穏やかさに反して、その言葉は重い。「——このからだに流れる血と精霊火(サライ)にかけて、わたくしは我が命を絶ったでしょう」

 胸に手をあて、凛としたまなざしでオースティンをみつめて、少女はためらわずに言い切った。

「……!」

 もはや、アレンは何もいえなかった。

 これが、彼女の謝罪なのだ。相手にすがって赦しを乞うことは、相手ではなく自分を救うためにするものであり、しょせん表面上の問題でしかない。少女の謝罪はそういった形骸的なものではなく、事態の帰結次第では己の命でもってあがなうこともいとわない——高貴な人々の挙止なのである。

 その人々とは一般に、わざわざ言及せずとも男に限定される。トゥルカーナでは、女と気高さとは相反する概念であり、仮に女が自害するような場合があれば、それは恋人や夫が他界したとき、もしくは望まぬ結婚を強いられたときというのがお決まりだった。要は女とは、己が身の哀れさにしか刃を握れないものなのだ。ラージャスタンに嫁がされる直前、オースティンの従妹であるアンジューが自殺を図ったことは記憶に新しい。

 が、この地では、女も他人のために死を選ぶらしい。アレンの眼には、ずいぶんと不可思議な場所のように見えた。これから主がひとり生きていくこの地は、これまでの価値観が通用しない。それは、あらゆる局面で英雄伝説に縛られてきたオースティンにとって、果たしていいのか悪いのか。

「さてと、わたくしは鹿を狩らなくては」

 命を賭してまでした謝罪から一転、少女は明るい表情で弓を背負いなおす。「おわびにごちそうしますわ。いかが?」

「……あっ」

 アレンは現実に引き戻されて、ひやりとした感覚を味わう。「……ご厚意はありがたいのですが、ここを離れるわけにはまいりませんので……」

「あら、それは残念ですこと」

 少女はすばやく踵を返して、再び森にむかって歩きはじめた。木陰に一歩踏みこんで、そこから振り返らずに言う。

「アレンさまとおっしゃいました?」

「え、はあ」

「あなたには、わたくしの鹿料理をお召しあがりいただけないでしょうが」

 彼女は少し、笑ったようだった。そして、

「——そちらのあなたさま。もしもあなたが、わたくしの思ったとおりのかたでしたら」

 身を翻し、木々のあいだに消えていく。「今宵、わたくしの鹿料理を、存分に味わっていただけるでしょう」

 少女の足の動きにともなって、鈴が鳴る。

 あくまでも規則的な鈴の音と、結わえてもなお豊かな亜麻色の髪、明るい紫の瞳。

 見送るアレンの眼や耳や脳裏に焼きつく、気高き少女の姿。とうに去った華奢な影が、しばし少年の意識を離れず、彼は呆然と立ち尽くした。

 しかし彼は、やがてものいいたげな視線をオースティンに投げる。主は従者の考えていることなどお見通しで、大いに含み笑いをした。アレンはため息をつき、

「……あなたのしたことは、盗人の所業ですよ。恥ずかしくはないのですか」

 と、呆れかえった口調で尋ねる。むだを承知で忠告するのは気が向かないが、長年の習慣として注意せずにいられない。通常、トゥルカーナでは、お側付の小姓とは小言をいうために存在している。ましてや、この不真面目かつ品行方正でない公子が相手では、小姓の喉と唇とは休む暇がない。

「何をいうやら」

 オースティンは意地の悪い笑みをもらした。「下僕たるおまえが僕のものなら、おまえのものも僕のものだ。ちがうか?」

 いけしゃあしゃあと返してくる主に、アレンは軽いめまいを覚える。ラージャスタンの皇家があれほどにも支配者一族としての誇り、面目、神秘性を保っているというのに、一方のトゥルカーナ公子たるオースティンは、自分の立場など毛ほども頓着しないのだ。親しみやすいといえば聞こえはいいが、民衆には民衆の役割、統治者には統治者の役割がある。果たして、《クレイガーンの現身》と謳われるオースティンが、乳兄弟をからかうためだけに泥棒まがいの行動に出るだなんて、民が知ったらどう思われるか。

(彼女に感化されて、少しは自覚するといい)

 と、少年は思う。

 アレンが気づいたのは、彼女の話す言葉によってだった。そこで最初に疑いを抱き、少女の身につけている耳飾りを見て、疑いが確信に変わった。

 アレンはラージャ語が話せない。彼はトゥルカーナ公子の乳兄弟として、生涯クレイガーンの子孫のそば近くで仕えていくことになっている。よって、外交の場に引きだされる機会はなく、トゥルカーナなど東方諸国で使用される東言(とうげん)さえ使えれば、何ら問題はない。が、にもかかわらず、先ほどのラージャスタン人の少女とは、支障なく会話することができた。なぜなら、先ほどの少女が口にした言葉は、他でもない東言だったからである。

 しかも彼女は、オースティンたちのことを「トゥルカーナのかた」と呼んだ。トゥルカーナ公国からみすぼらしい馬車に乗ってやってくる者たちを、あらかじめ知っていた、ということである。すなわち少女は、マキナ皇家の内部情報を熟知する者にちがいなかった。衣服にしても裕福な生活ぶりがあらわれていたし、少なくともただ人ではないことがわかる。

 しかし、それだけでは根拠にはなりえなかった。アグラ宮殿で皇家にかしずく女官、あるいは貴族や皇家の傍流にあたる娘という可能性もある。けれど、故意か偶然か、少女はアレンに決定的な証拠を与えてくれた。

 それが、彼女の耳で揺れていた、雫型の耳飾りである。当初は民間人の好むような安っぽい見てくれが気になったものの、よくみると見覚えのある品だった。それもそのはず、そもそも耳飾りの所有者は——アレン自身なのである。

「あれは、セリアにもらったものなんですよ。人にもらったものをまた人にあげるだなんて、最悪の人間のすることです。おかげさまでぼくも、晴れて最悪の人間の仲間入りですよ! のみならず、あなたはさらに他の人に渡した」

 いかなる名目であんな品を贈れるんでしょうね、とアレンは毒づいた。

「親愛の証に、と」

 オースティンは平然と答える。

「ほー、親愛の証に、盗んだ耳飾りを? しかも、小姓の知人が愛用していた安物の耳飾りを?」

 アレンは追及する気力が失せてきたが、最後まで言った。「いやがらせのおつもりですか? ぼくはともかく、ラージャスタンへの! ラージャスタンとの縁を絶ちたいんですか、あなたは?」

「まさか。目的はちゃんとあった」

 主たる少年は微笑む。「ひとつ、皇女が僕への憧れのために、身分も顧みずあんな安物——それも使い古しの装飾品を身につけるとしたら、少しは彼女の愛情を信じる気にもなれよう。ふたつ、おまえが後生大事にどうでもいい女の贈り物を保存しているから、代わりに捨ててやった。むしろ、感謝されてもいいぐらいだ」

 はあ、とアレンはあからさまにため息をついた。確かに、セリアのような女は趣味ではない。セリアはサンヴァルゼ城の宮廷料理女で、アレンよりいささか年上である。経験豊富ゆえに駆け引きを好むのか、肝心のことは決して言葉にせず、そのくせ絶対に捨ててくれるなといって、かたちの残る、それも自分の残り香のしみついた品を渡してきたのだ。正直いって弱った。

 が、失礼に変わりはない。素直な感謝は心のなかだけにして、アレンは眉をひそめてみせる。

「それで? オースティンさまは、皇女の愛情を信じられそうですか?」

 そのままの表情で、アレンは尋ねた。「それともうひとつ。マキナ皇家を信じられそうですか?」

「さあな」

 オースティンは肩をすくめ、つぶやく。「ハスダが修理工を連れて戻ったら、おもしろい話が聞けそうじゃないか」

 おまえの発言も、到底この国で許される類いの代物じゃないな——と、主は目を細めた。アレンは言い返すことなく、黙って聞き流した。

 

To be continued.

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